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Soundfort AS-100+ デジタルアンプ

オーディオというジャンルが廃れてからどれくらいでしょうか。

ぼくが学生だった頃といえば90年代ですが、その頃はまだ国内の電機メーカーはどこもオーディオをやっていたように思います。だけど、いまではそのほとんどがオーディオ事業をやめてしまったか、会社そのものが買収されたりして業態が変化してしまいました。

 

高い、重い、でかいのがよいオーディオであるということを顧みなかった結果、排他的な環境をメーカー自身がつくっていたように今思うと見えます。

 

廃れたオーディオ業界に光明がさしたのはデジタルアンプの登場にひとつ要因があると思います。

 

オーディオの中核をなすアンプはといえば、真空管からトランジスタになってなお構成回路はアナログのままでした。ですからそのエネルギー効率は非常に悪く、そのほとんどは熱になって部屋を温めていたのです。

ところが増幅方式がデジタルになると、そのエネルギー効率は劇的に改善されます。一般的に、アナログアンプの効率が20〜30%と言われる中、デジタルアンプは70%ほどあるそうです。効率が上がると筐体を小さく作ることができます。そして回路がデジタル化されたことで、圧倒的に低コストで製作できるようになりました。

 

とはいえ、デジタルアンプが出はじめた当初は音が悪かった記憶があります。やっぱりデジタルはだめだねなんて言っていました。それからオーディオに興味を失って20年ほど経過して、再び戻ってみると世の中デジタルアンプが普通になっていました。そして、高い・重い・でかいとは正反対の安い・軽い・小さいオーディオたちが焼き払われた森林の大地に芽吹いた新芽のように青々と茂っていたのです。

 

低価格デジタルアンプのほとんどは中国の新興メーカーが作っているものです。いわゆる、中華デジアンと呼ばれるもので、安いものだと2、3,000円で購入できます。オーディオの価格概念を根底から吹き飛ばす安さです。

 

でも、そうしたものにぼくはなんの食指も動きません。たとえ音が良くても買いません。

だれが、どういう想いでそれを作ったのか。それを知らずして愛着など湧くはずもないからです。それはある意味音以上に重要なことなのです。

 

そこでぼくは日本人が開発をしているアンプに絞って探しました。そして見つけたのが

SoundfortというメーカーのデジタルアンプAS-100+だったのです(やっと登場)。

 

Soundfortはもともと半導体商社にいた片山典之さんという方が独立起業して起こしたブランドです。

くわしいことはオフィシャルサイトをご覧いただくのが一番だと思いますが、部品は全数自分で検品しないと気がすまないとか、コピーされても同じ音はでない自信があるとか、自らが生み出すプロダクトに対する情熱を感じないではいられません。ぼくは即座に購入ボタンをクリックしてしまいました。16,800円です。中華デジアンと比べたら2倍3倍の値段ですが、オーディオとしては破格に安い。

 

正直実際に音を聞いてみるまでは不安がありました。ほんとにちゃんと鳴るのかな、音質はどうなんだろうって。ぼくのデスクトップで鳴らすスピーカーはモニターオーディオのラディウス90という超コンパクトスピーカーです。故に能率が83dBと低く、インピーダンスも8Ωと高い。

つまりアンプにパワーがないと鳴らしにくいスピーカーなのです。

 

AS-100+は出力が18Wです。18Wしかないのか、18Wもあるのか判断つきませんが、論より証拠、とにかく聴いて見ます。Macのボリュームを最大からマイナス1に設定し、アンプのボリュームをゼロから徐々にあげていきます。8時9時付近の音の小ささに少々不安を感じながらさらにあげていきます。しかし

9時をすぎたあたりから音量に力を感じはじめ、10時すぎには視聴距離1メートル以内では十分な音量に達しました。

 

エージングも兼ねてしばらく音楽を鳴らしっぱなしにしていましたが、音質もなかなか良いと思いました。開発者が目指したとおり、癖のない素直な音です。スピーカーも初めて聴きますので、アンプ単体の素性はわからないのですが、出てくる音が良いのですから、どちらも良いのだと思います。

 

これでようやく編集環境が整いました。ヘッドフォンは耳が疲れやすく、痛くなるので苦手です。かといってiMac内蔵のスピーカーでは音質の評価が難しい。やはりまともなアンプとスピーカーがないと音も含めた編集ができないのです。

 

今回まったくゼロから機材を集めるために探しに探したのがアンプでした。でもその甲斐あって、気持ちのこもった素晴らしいアンプに出会えました。Soundfort AS-100+、とても良いです。