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物撮りは楽し

妻の祖父の形見の時計をもらった話は以前書いた。それには黒いベルトをつけていたが思うところあって、というか外の時計で黒いベルトを使いたくなってこの時計にバックスキンの明るい茶色のベルトを合わせてみた。するとこれが中々似合うので気に入ってこの時計を持ち出す機会が増えたのである。

 

腕時計はベルトも込みで一つのデザインである。ベルトのない時計というのはどこかふわふわと落ち着きがない。よくアンティーク時計屋さんにありがちであるが、ベルトのついてない時計をショウウィンドウに置いていたりする。そうした時計はどんなに高価であってもまるで安物にしか見えず、また洋服を脱がされて丸裸にされ身を縮こめているひとのように哀はれに見えてならない。

 

そう腕時計にとってベルトやブレスレットは身に纏う服なのである。だれだって一糸纏わぬ姿で立てぬと同様に時計もまたベルトは不可欠な要素なのだった。だから時計屋さんは安物のベルトで構わないからどうか時計を裸で置くようなことはしないでほしいと思う。

 

ラドーのシンプロンについて改めて書くほどのことはないが、まったく高級品ではない。高級品でなかったおかげで孫の婿という立場のぼくの手元へやってきたのである。これがロレックスだったらそうはいくまい。

 

物撮りは照明機材を広げるのが面倒でA4の白紙二枚で代用した。ストロボも一々固定するのが面倒でセルフタイマーを利用して手持ちで行った。手持ちの良いところは次々に照射アングルを変えられることである。デメリットといえば再現性に乏しい(忘れちゃう)ことがあげられるが、結果よければ全て良しなのでメリットの方が大きいと言える。

 

絞りはF16。シャッタースピードは1/100。10時8分に撮り始めたが6分経過してしまったのはご愛嬌。だってゼンマイ巻いちゃったんだもん。ちなみにムーブメントはAS1525。今はなきAシールド社の手巻きムーブメント。ETAに統合され結局ASのムーブメントは一つも残らなかったのは残念だ。