· 

USB-DACのはなし CARAT-TOPAZ

 

 

セパレートDACというのはCDプレーヤー内蔵DACに飽き足りない一部の酔狂なオーディオマニアが使用する程度のものだった。音響メーカーもハイエンド製品にのみ、CDトランスポート(PC風に言えばCDドライブ)とDACを別々にした製品を売っていて、一台に合わせたものよりも遥かに高額のプライスタグがそれぞれにつけられていた。

 

 

 

そんなニッチの商品が、USBと出会ったらあっという間に市民権を得た。それもこれもPCの音が悪いからである(現在形)。Macだってちっともよくない(現在形)。ぼくもその昔PC/AT機を自作していた頃サウンドブラスターを内蔵したりしたけれども大して音は良くならなかった。それが、USBが普及して、デジタルデータをPC外でアナログに変換したらものすごく音質が向上した。それもだれが聴いてもわかるレベルで向上したのだから流行らないわけがない。

 

 

 

かつて最低でも何十万もしたセパレートDACが、今では安いものなら数千円で手に入る。たぶん、現在のほうがまともな値段なのだと思う。オーディオは高ければいい音、はもう通用しない。

 

 

 

CARAT-TOPAZは韓国のStyleaudioが製造するUSB-DACである。日本ではもう輸入をしていないし、本国でもやってるんだかいないんだかよくわからない状態になってしまったStyleaudioであるが、数年前までは確かに気を吐いていたメーカーである。正直いって、韓国のオーディオメーカーなんて眼中になかったが、知人に勧められて(というか頂いて)目が覚めた。

 

 

 

製品名に宝石の名前がつけられていて、他にエメラルド、サファイア、ルビー、ペリドットなどがあった。ぼくは最初エメラルドを貰ったのであるが、これがギャングエラーがひどくて使い物にならなかった。音質自体はかなり良かったのであるが、ボリウムの精度が低いのだろう。その代わりとしてやってきたのがエメラルドの上位機種トパーズである。こちらも極微小音量時にわずかにギャングエラーがあるが、普段の使用領域では問題ない。さらに上位機種ということもあり、音の解像感はトパーズが上である。

 

 

 

トパーズは音の見通しの良さ、歯切れの良さ、分離感の良さなどかなり高いレベルで実現したDACである。音が固くなりすぎないのもトパーズの良さだ。トパーズの出力はヘッドフォンとRCAしかないため、現状ではアンプにつないでスピーカーという順になる。もしトパーズにXLR出力がついていたらアクティブスピーカにつなぐことができてよかったのになあと思う。最近のアクティブスピーカはだいぶRCA入力を持つようになってきたが、モニター系はまだまだXLRオンリーというのも多いのだ。ぼくがモニタースピーカーにこだわるのは仕事で使用しているからです。

 

 

 

CARAT-TOPAZはかなり気に入っているのでこのまま使い続けたいのであるが、モニタースピーカーに代えたら使えなくなってしまうのがもどかしい。ああ悩ましい悩ましい。しかし悩ましがっているうちが一番楽しいとよく言いますね。

 

 

 

トパーズはヘッドフォンとスピーカーの切り替えが単独でなく、電源スイッチも兼ねている。スイッチの中央が電源オフで、上にあげるとヘッドフォン、下がスピーカーである。だから、ヘッドフォンからスピーカーに切り替える際必ず一度電源が落ちる。これが精神衛生上よろしくない。瞬間的なオンオフが起こることに抵抗があり不安を感じるのであるが、それで故障したという話は聞かないのでまあ大丈夫なんでしょうが。

 

 

 

CARATシリーズはモデルによってボディカラーが違うが、このトパーズは全部真っ黒でそれがいい。エメラルドはパネルだけ黒で、ボリウムと筐体がシルバーカラーだった。この辺の組み合わせは好みの問題だろうが、オールブラックのほうが引き締まって見えて好きだ。音質とは関係ないけど、毎日目にするものだからオーディオは見た目も重要である。

 

 

 

ところで、USBを使うとPCCPUが動くので編集のパフォーマンスが落ちるのではないかという不安があるひともいないではないかと思う。ぼくもUSB-DACが流行り始めた頃に飛びつかなかったのは、やはりレンダリングなどの速度が落ちる懸念があったからである。しかし現代のPCは十分に高速になったからそんな心配は御無用だ。実際CARAT-TOPAZで音を出しながらFinalcut4Kの編集をガシガシやっても全然問題ない。2017年のiMacで大丈夫なのだから、それより新しいものだったらまったく平気だろう。

 

 

 

今、トパーズに限らずCARATシリーズの中古価格が上昇しているらしい。手に入らなくなると欲しくなるのが人の情というものだが、いろいろたくさんDACが出回った中で改めてCARATシリーズの良さが見直されている証拠である。DAC自体は多くのメーカーが採用しているバーブラウンのPCM1792であるが、結局のところ最終的に音を決めるのはアナログに変換したあとのアナログ回路の出来次第ではないかと思う。そしてStyleaudioはその辺の作りが上手いのかもしれない。