昆虫たちの姿が消える冬、鳥たちは一体何を食べているのか。それがぼくにとって小さな疑問だったが
ようやくその答えを森で見つけることができた。答えは昆虫である。鳥たちの多くは雑食だからもちろん昆虫以外も
食べるのであるが、やはり彼らの目的は昆虫だった。
というのも、真冬になっても昆虫たちはぼくらの目の届かないところでたくさん生きていたからである。
多くの昆虫が越冬をする。そして彼らは直接外気に触れないところでじいっとじいっとしているのである。
鳥たちは巧みに木の皮をめくり、穴をあけ、ほじくってこうした昆虫を発見し食べているのである。
朽ちた木が立っていた。樹皮が割れて幹から浮いている。指先で軽く引けばバリバリとかんたんに剥がれた。
ふと見るとヨツボシケシキスイが三匹身を寄せ合っているのが見えた。ヨツボシケシキスイが越冬するなんて
知らなかった。その下にはメタリックパープルに輝くコガネムシの仲間がいた。さらによくよく見ると
ほとんど黒くなった樹皮と同化したカメムシがたくさん集まっていたのである。
彼らはこうして寒い冬を凌いでいたのである。悪いことしたなと思った。外気にさらされて死んでしまうかもしれないし、
鳥に見つかればみんな食べられてしまうだろう。
思いの外多くの昆虫を目の当たりにして、鳥たちが飢えずに生きていける理由を理解した。百聞は一見にしかずというが
実地体験が伴うと一生忘れないだろう。ぼくは息子とひとしきり昆虫を観察して鳥たちの食料について話し合いその場を
あとにした。息子もここで得た知識は忘れないだろう。昆虫たちには悪いが素晴らしい体験をさせてもらった。
カマキリの卵はあまり鳥たちが好んで食べているとは思えないが、他の昆虫たちの寄生対象になっている。
カマキリの卵は外側を卵鞘と呼ばれる殻に覆われていて、その内部はミルフィーユのようになっていて
空気の層が幾層も出来ている。優秀な断熱材に囲まれて快適な室内を実現しているのだ。もしカマキリの卵に寄生できれば
豊富な食料を食べながらぬくぬくと春を待てばいい。そんなわけでカマキリの卵は様々な虫たちに狙われている。
フェンスに産み付けられたこのハラビロカマキリの卵も下の方に穴が空いているので、もしかしたら
寄生されてしまっているかもしれない。
しかし、そんなことを抜きにすれば人工物と昆虫のコンビネーションは絵になる。アートだ。まったく美しい。