ヴィラデストワイナリーは作家であり画家である玉村豊男が所有する長野県東御市にある農園である。玉村さんの著書を読んでいると晴耕雨読を地で行くような生活を送っているようでまことに羨ましい。ぼくはワインが好きなのでワインのオウンドメディアはないものかと探してみた。そしてサントリーのような大手でないほうがいいとも考えていた。それでふと我が家の本棚を眺めていたら玉村さんの本をみつけてヴィラデストワイナリーがあったと思い早速調べてみたのである。
ヴィラデストワイナリーのYoutubeチャンネルは登録者数が550人。三年ほど前から始めたようで、動画の本数は117本とある(2023年4月現在)。おそらく、そろそろうちも動画で情報発信でもするかという気持ちで始められたのではないかと思う。そしてこのようになんとなくうちもという感じで始められる企業やお店はかなり多いのではないかと推測する。
始めてはみたものの、意外にめんどうくさいのが動画である。インスタやTwitterと違って、Youtubeはなにかと面倒くさいとぼくも思う。どうしたって短時間でちゃちゃっとできないのである。やたらに時間がかかった割には期待していたほど見られないとがっかりしてしまう。それでやめていくひとも相当いるはずだ。
ヴィラデストワイナリーは諦めずにコンテンツを上げ続けていて、それぞれが人気がでそうな内容ばかりである。コンテンツは大きく三つに分けられる。
1. ワイナリーの動画
2. レシピ動画
3. 玉村さんの動画
である。1と2がほとんどで、3がちょっぴりといったところか。ワイン好きなら1のコンテンツはそそられるだろう。レシピ動画は非常に競合が多い激戦区だが、それだけ需要があるとも言える。そして3は玉村豊男の愛読者でなくても、ワイナリーのオーナーの言葉は聞いてみたいというひとは多いと思う。こう考えると動画コンテンツとしてヴィラデストワイナリーはとてもよい材料を持っているのである。では、そのよい材料をどのように活かしたらもっとたくさんのひとに見てもらえるようになるかを今回のテーマとして話を進めてみたいと思います。
技術的なことについて
ワイナリーの動画はもっともエキサイティングで価値あるコンテンツであるが、中のひとがその価値に気づいていないのがなんとももったいない。これはヴィラデストワイナリーに限ったことではないが、自分たちにとっては日常の風景すぎてなにに価値があるのか見えなくなってしまっているのである。たいていの場合、こんなもの撮って面白いの?と思うことが傍からすると面白いものだったりする。とくに制作をすべて内製している場合、コンテンツの魅力を発見できないことが多々ある。
さて、ワイナリーの動画はドローンによる空撮映像があって見応えがあるが、残念ながら画質が悪い。ドローンが古いのかエンコードで圧縮しすぎなのかわからないがただでさえ高精細を要求する風景映像で画質が悪いのは致命的である。空撮は高画質でなければ意味がないのだ。よく言うじゃないですか。ドローンによる美しい空撮映像をご覧ください、と。美しいと空撮はイコールなのである。
僕自身日本料理店のYoutubeチャンネルでレシピ動画を制作しているが、最近のレシピ動画はただレシピを掲載すればいいという時代は終わったのだと実感している。だれが、何を語り、どう作るかが重要である。とくに何を語りの部分のウエイトが大きい。ただレシピを順繰りになぞり料理を完成させていくだけだと、さっと見られる文字メディアに対してYoutubeは分が悪い。クックパッドやプロが紹介するレシピサイトではなく、なぜYoutubeの動画を見るのかについて考えると見えてくると思う。最近のひとは文字を読まなくなってきたから動画を見るというひとがいるが、それはあまりにも短絡的な発想だとぼくは思います。
だれが、という部分は有名か無名かということではない。もちろん有名であれば集客力は高いが、だからといって無名はダメかといえばまったくそんなことはない。まったくもってない。だれが、というのは、どのような個性を打ち出していくか、という意味である。しかしこれも安心してほしい。打ち出していく個性というのは時間をかけて回数を重ねることで自然と生まれてくるものなのである。今数十万人のチャンネル登録者数を誇るYoutuberも最初は朴訥でぎこちなく、どこにでもいるようなひとだったのである。
ただしどういう風にしていきたいか毎回意識することが大事である。これはなかなかひとりでは難しいだろうから外部のひとに手伝ってもらうといいかもしれない。
コンテンツのことについて
玉村さんの動画はそもそも数が少ないが、ここは本人のやる気ひとつだろう。たまに告知宣伝を兼ねてやる程度からもっと前のめりでコミットするかどうかでだいぶ違う。ぼく自身は本で読んでいたあの生活ぶりを動画で見られたら非常に面白いだろうなと思う。
ワイナリー動画はぜひともひとに出てきてもらいたい。ひとが映像に映っている、ではなくて前面に出てきてほしいのだ。作業風景はなにをしているのか、なにを感じているのか話ながら進めてくれたら最高である。いつものどうということのない作業でさえ知らないひとには珍しいものである。ワインに限らず、作り手の顔がみえるということは、これからのものづくりには欠かせない要素だ。そして顔の見せ方というのが大事である。大事といっても難しいことはなにもない。ただ自分の言葉で伝えることを心がけるだけでいい。
まとめ
農園という場所はぼくからすればコンテンツの宝庫だ。それがワイナリーともなれば醸造施設も入ってくるから面白さは倍増する。当たり前すぎてなにが面白いのかわからなければ外部の人間に相談するといいだろう。ヴィラデストワイナリーはダイヤの原石を持ちながらそれを磨きあぐねている、そういう印象を受ける。磨いたら実に魅力あるチャンネルになるのは間違いない。